日本武勇談 小便をかけられた竹中半兵衛
或る日のことでありました。竹中半兵衛が登城しますと、いきなり矢倉の上から彼れの頭上に小便をしかけたものがありました。さアいくら何だも武士が小便を垂れかけられたとあつては勘弁できぬ、降りて参れ、素首叩っ斬って遣はすと、半兵衛刀の鯉口でもくつろげるかと思ひの外、素知らぬ顔をして小便を押拭ひ、舅の安藤伊賀守の邸を訪れて、
「重治、お屋形様に怨むことがござるに依つて何卒、ご加勢下され、討ち取って鬱憤を晴らす覚悟でござる。」
と、だしぬけに頼みました。
伊賀守はあきれました。此奴、何て馬鹿だろうと思ひましたが、さあらぬ体(てい)になだめて帰しました。
*この項目は絵空さんから情報提供いただきました。